新婦 マイさん(30代後半)ファッションブランドの販売員
新郎 トシアキさん(30代後半)会社員
*2カ月後に海外リゾートで挙式予定

Beautiful wedding couple is enjoying wedding

都内の一等地に路面店をもつファッションブランドで販売のお仕事をするマイさん。「ドレスの相談をしたい」とのお問い合わせでお話したところ、共通の友人がいることも分かりすぐに意気投合しました。

小さいころからウエディングドレスを着るのが夢だったマイさん。ファッションのお仕事をしていることもあり、結婚が決まったときに「なるべくたくさんのドレスを見てみたい」と思いました。そこで、ウエディング雑誌(25ansウエディングも愛読いただいていました♡)に掲載されているドレスサロンをチェック。インターネットでも情報収集し、気になるサロンへ片っ端からフィッティングの予約をしたそう。

「全部で30店舗くらいのサロンでフィッティングしました」とマイさん。「これ見てください」とお持ちくださった紙には、ドレスサロン名、フィッティングした日、スタッフの対応、ドレスの感想などが表になって事細かに記入してあります。

「どのサロンのドレスも素敵なのは素敵なのですが、なかなか気に入る一着と出会えませんでした」「そうですか…」ときどき、たくさんのドレスをフィッティングし過ぎてしまって、どれを選んだらいいか分からなくなってしまう花嫁さんがいます。マイさんもそのパターンなのかな?と思っていると「最後に行ったサロンでようやく運命の一着に出会えたんです。でも…」と顔を曇らせます。

「海外でレンタルできないと言われて」ワタクシは驚いて「フィッティングする前、担当の方に海外挙式である旨はお伝えしていなかったのですか?」とうかがいました。すると「名前などと一緒にアンケートみたいなものに記入しました。最初はそれに添ってドレスを見せていただいていたのですが、どんどん夢中になっちゃって、あっちのも見たい!こっちのも着たい!って状況になってしまったんです。気がついたらレンタルできないドレスを着てたみたい…」

そのドレスが海外挙式でレンタルできない理由をマイさんにうかがうと
・オーダーによるセル(販売)のドレスなのでレンタルに対応していない(フィッティングしたドレスはサンプルなので貸すことができない)
・1週間以上の長期間に渡るレンタルに対応しているのは一部のドレスなので、その中から選んでほしい
とのこと。確かにドレスサロンの主張も一理あります。
ただ、海外挙式だと分かっている上で貸すことのできないドレスをマイさんにフィッティングさせてしまったサロンにも落ち度はあります。

さて、どうしましょうか。

「どうしてもそのドレスでないと…」「そうです! 30ものサロンを見て100着以上のドレスを着ました。でもどのドレスも運命のドレスではなかったんです。あのドレスを着れないなら結婚式を挙げたくありません!!!」

そして…
「担当のスタッフが悪いんです。最初、わたしが着たいドレスを全然見せてくれなくて、経験が浅いのかサイズが合っていなかったり、着せ方が間違っていたり。あのドレスだって着たときはレンタルできますよと言っていたのに、その後になってやっぱりダメだって言い出したんです」「次の予約の方が来るので、他のドレスをご検討くださいって帰されちゃったんです。悔しくてもう一度フィッティングしたいって電話したのですが、その担当者じゃ埒があかないんです。梅沢さん、どうにかしてください!」

お話をうかがっていて、マイさんにはもう少しクールダウンして冷静に物事を見ていただきたいなと感じる一方で、もちろん「運命のドレス」をどうにかして結婚式でお召しいただきたい。マイさんのお力になりたい。そんな気持ちも強くあります。マイさんがフィッティグしたドレスサロンはワタクシもお付き合いがあり、オーナーさんにもお会いしたことがありましたので…

「ドレスサロンの方を存じ上げているので、マイさんのお名前を出してお話してみてもいいですか?」マイさんに了解を得て、サロンへお電話することにしました。

早速、サロンのオーナーさんとお話したところ「はい、マイさまですね。担当から話を聞いています。ちょっとマリッジブルーのようでしたのでていねいにご案内させていただいてはいたのですが…。こちらに不備がありまして申し訳ありませんでした」その微妙な口調からワタクシは、マイさんはこちらのサロンでかなり感情的な態度を取っていたのではないかと感じました。

「どうしてもそのドレスを海外挙式で着たいと仰っているのですが…」とのワタクシの言葉に対してオーナーさんは「今回は特別にということで対応させていただきます。あまり前例をつくってしまうと他のお客さまにご迷惑になりますので、あくまでも特別にということで」と快諾してくださいました。

その後、マイさんからお電話をいただき「梅沢さん、運命のドレスを借りることができました! 担当の方もベテランっぽい方に変わって、オーナーさんもご挨拶に見えて、本当にありがとうございました」と嬉しそうな声です。

マイさんとのお電話を終えた後、ワタクシはなんとも言えないモヤモヤとした気持ちになりました。ウエディング業界にいる身としてはこのような事態になってしまったサロンの事情も分かります。そしてそれに対してこのサロンがベストを尽くしてくださって本当に良かったなと思っています。けれど、だからこそ、マリッジブルーならぬマリッジレッドの花嫁さんにこのような解決方法で良かったのでしょうか?

青い空の下で幸せそうな笑顔を浮かべるドレス姿のマイさんのお写真を前に、ワタクシの中で答えは見つからないままです。

*このコラムは実際のご相談に基づいておりますが、プライベートに配慮し名前や職業等の個人情報、一部の内容に関してはフィクションになっております。